兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開催中の第93回選抜高校野球大会は、いよいよ8強が出そろった。昨年から導入された1人の投手が1週間に投げられる球数を500球以内とする投球数制限が、甲子園大会では春夏通じて初めて今大会から適用される。いずれも2試合を戦った8チームの投手起用に「球数制限」はどう影響しているのか。背番号1を背負うエースの投球数からは、「登板派」と「温存派」に分かれるエース起用法が見えてくる。
「エース登板派」の筆頭は、193センチ右腕達孝太(3年)が2試合連続完投した天理(奈良)だ。8強で1人の投手が2試合を完投したのは天理だけ。「エースたるもの、先発したら完投」と中村良二監督。全試合完投の可能性を残すが、勝ち進めば試合間隔が狭まるだけに、投球数制限をどうクリアするのか注目が集まる。
福岡大大濠の左腕・毛利海大(3年)と中京大中京の右腕・畔柳亨丞(3年)のエース2人も、ともに2試合に先発した。中京大中京は2回戦で四回までに8点をリードしたが、畔柳は七回までマウンドに残り、110球を投げた。高橋源一郎監督は「先のことは考えず、この試合に勝つためのベストの形を選んだ。球数のことはあまり考えていなかった」とエースへの信頼感を示した。
2回戦でエースが登板しなかった「エース温存派」は3チーム。仙台育英は1回戦の日程が大会初日と早かったため、準々決勝では右腕・伊藤樹(3年)の球数はゼロからのカウントになる。須江航監督は「頂点まで駆け上がるためには、伊藤以外で勝ち上がることが重要だった」と狙いを語る。
明豊の右腕・京本真(3年)と、智弁学園(奈良)の左腕・西村王雅(3年)も2回戦では登板しなかった。準々決勝は登板間隔が空いたことでフレッシュな状態で迎えられる。
東海大相模(神奈川)は、エース左腕・石田隼都(3年)を1、2回戦ともリリーフに回し、試合を締めた。ただ、門馬敬治監督は「自分たちと相手を見比べて、ベストな投手を起用したい」とエース起用を先発に固定せず。臨機応変に臨む構えだ。東海大菅生(東京)の左腕・本田峻也(3年)は2回戦の九回からの1回が今大会唯一の登板。若林弘泰監督が肩の不調を明かしており、エース起用には慎重だ。
開催された過去10大会を振り返ると、1週間で500球以上を投げた投手は、第82回大会(2010年)優勝の興南(沖縄)・島袋洋奨▽第85回大会(13年)準優勝の済美(愛媛)・安楽智大▽第87回大会(15年)優勝の敦賀気比(福井)・平沼翔太▽同準優勝の東海大四(北海道、現東海大札幌)・大沢志意也▽第88回大会(16年)優勝の智弁学園・村上頌樹の5人。いずれの投手も決勝まで全試合に登板しており、エース頼みでは1週間500球に達するのは必至だ。
令和初となる紫紺の優勝旗を目指す戦いは、エースの起用法が大きなポイントになるのは間違いなさそうだ。【吉見裕都、田中将隆】
8強チームの「背番号1」投手の球数
【仙台育英】
伊藤樹 計77球
(19日・1回戦のみ)
【天理】
達孝太 計295球
(20日・1回戦=161球、25日・2回戦=134球)
【東海大相模】
石田隼都 計122球
(20日・1回戦=52球、26日・2回戦=70球)
【福岡大大濠】
毛利海大 計278球
(22日・1回戦=143球、26日・2回戦=135球)
【明豊】
京本真 計47球
(22日・1回戦のみ)
【智弁学園】
西村王雅 計141球
(23日・1回戦のみ)
【東海大菅生】
本田峻也 計23球
(27日・2回戦のみ)
【中京大中京】
畔柳亨丞 計241球
(25日・1回戦=131球、27日・2回戦=110球)
球数制限、監督気にする? 積極か温存か戦略二分 選抜高校野球 - 毎日新聞 - 毎日新聞
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