学校法人「角川ドワンゴ学園」が運営する「N高等学校」が、2020年度の卒業生の進学率を発表した際、浪人生も進学者に含めるなどして、進学率を高く見せていたことが「週刊文春」の取材で分かった。 【画像】浪人生も“進学者”としてカウントされていることがわかる内部資料 N高は2014年に経営統合した出版大手のKADOKAWAと「ニコニコ動画」で知られるIT企業ドワンゴが設立した通信制の高校。「ネットを駆使した未来の学校」を標榜し、2016年4月に開校した。「ネット」と「通学」の2コースがあり、最短3年で高卒資格が取れる。開校当初、1500人だった生徒数は、昨年12月時点で約10倍の1万6641人となり、生徒数日本一の高校に急成長している。 N高は3月23日、2020年度の「進路・大学合格等実績発表会」を開催。この発表会で公表した進学率を算出するにあたり、N高内部で用いられた複数の資料と卒業生4155人の進路リストを「週刊文春」が入手した。 N高が発表した進路決定率は、大学等が23.61%、専門学校他が40.46%、就職者が20.98%、進路未定が13.94%となっている。文科省が発表した2019年度の通信制高校全体の進路決定率は、大学等が17.6%、専門学校他が23.3%、就職者が18.9%。N高の数字はこれより明らかに高く見える。 だが、内部資料には進学率に関して、このような記載があった。 〈「専門学校他」※浪人者は例年通りこちらでカウントしています〉 卒業生の進路先リストを一人ずつ個別に確認すると、「専門学校他」の中に「予備校」や「学習塾」に通う浪人生まで含まれており、自宅浪人生も合わせて約300人が「進学者」としてカウントされている。
専門学校進学者の実際の割合は
さらにゲームクリエイターや声優の養成所、お笑い養成所など高卒資格を必要としない学校に進学予定の生徒約200人も「専門学校他」に含まれていた。 これらの数値を発表データから抜いた場合、卒業生全体の内、専門学校進学者の割合は約21%となり、現在発表されている数字の半分に。通信制高校の平均も下回る。 文科省高等教育政策室に確認したところ、「文科省で発表している学校基本調査では、予備校など専修学校一般課程と呼ばれるスクールは専門学校の進学率に含んでいません」と回答した。 N高の発表方法について、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が語る。 「今回のN高のやり方は、生徒・保護者の気持ちや社会通念を欺くものです。インパクトのある広告を出せば生徒数を増やし、業界シェアを伸ばせるという意味で、通信制高校は一般的な高校よりもむしろ塾の構造に似ていることを見落としてはいけません。日本最大規模の通信制高校であるN高が不誠実な実績発表をすると、それが業界のスタンダードになってしまい、教育の世界がいわば『やったもん勝ち』の倫理観のない競争の場になりかねない。責任を痛感して欲しいですね」 3月29日、「週刊文春」が、発表したデータの根拠や問題点について質問すると、N高は次のように回答した。 「進学先の『専門学校他』の区分におきまして、文部科学省の学校基本調査とは異なる独自の区分を採用しておりました。大学受験予備校に進む生徒を含む浪人生や、自宅浪人生についても『専門学校他進学』に含めていたことは不適切であり、お詫び申し上げます」 N高は、数字を訂正した進学率などを、再度発表するとしている。 3月31日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」及び4月1日(木)発売の「週刊文春」では、N高の授業内容や進学実績、さらに就職率における不誠実な発表方法についても報じる。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年4月8日号
浪人を進学に 生徒数日本一「N高等学校」が進学率を“粉飾”していた 【内部資料入手】(文春オンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
Read More
No comments:
Post a Comment