北朝鮮国営の鉱山や農場で、孤児数百人が「志願」して働いているという。同国国営の朝鮮中央通信(KCNA)が5月27日に伝えた。
KCNAは「若い盛りの、知恵と勇気を持った」子供たち数百人が、国家のために肉体労働に従事することを選んだとしている。
子供たちの年齢は不明だが、報道された写真では10代の子供たちが確認できる。
人権団体は北朝鮮が強制的に児童労働を行っていると長年にわたって非難してきているが、北朝鮮側はこれを否定している。
2月にはBBCが、北朝鮮の炭鉱で韓国人捕虜とその子供が、北朝鮮政権と兵器開発の資金を生み出すために奴隷労働をさせられているとの疑惑を報じた。
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北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記は4月、党の末端組織責任者会議で、苦難に備えるよう呼びかける異例の発言をした。同国は2020年に発生した新型コロナウイルスの大流行を受け、国境を封鎖し、経済的なライフラインである中国との貿易を停止した。
国営メディアは先週、志願者とされる人たちが国中で肉体労働に従事していると、複数回伝えた。
5月29日には、約700人の孤児が工場や農場、森林などで、志願してボランティアとして働いているとKCNAが報じた。
そして同27日には、「数十人の孤児たちが(朝鮮労働)党が示した愛の100万分の1でも誓いを果たすべく、川内地域炭鉱施設に駆けつけた」と報じた。
同報告書によると、北朝鮮当局は「主要道路の除雪や生産目標の達成など、特別なプロジェクトの完了を支援するために」児童を職場に派遣することがあるという。
また、16~17歳の子どもたちが「軍隊式の青年建設旅団に10年間在籍」し、「強制労働の結果、肉体的・精神的なきずを負い、栄養失調や疲労、発育不全」に陥っているという。
北朝鮮はこれらの疑惑を繰り返し否定している。
北朝鮮には約2600万人が暮らしているとみられ、政権は市民生活のあらゆる部分を厳しく管理している。
<解説>経済立て直しのため、無償の労働力を求める北朝鮮――ローラ・ビッカー・ソウル特派員
私は、北朝鮮の炭鉱で強制労働させられたという脱北者を何人か取材したことがある。
彼らが語る労働環境は恐ろしいものだった。致命的な事故が頻発し、長時間の過酷な労働を強いられ、食事もろくに取れなかったのだという。
こうした仕事を選ぶ人はほとんどいないだろうし、多くの人権団体が国営メディアの報道や写真を非常に憂慮しているに違いない。
加えて、そもそも北朝鮮がなぜ鉱山や農場、工場といった場所で無償の労働力を求めているのかという、もっと大きな疑問もある。
金氏が昨年1月に隣国・中国からの新型ウイルス感染症の拡大を防ぐため、大胆に国境を完全封鎖して以降、北朝鮮国内は絶望的な状況に陥っている。
必要な物資がようやく国内に入ってきたとの報告はあるが、経済を再び動かすには間違いなく不十分だ。
経済を動かすには、生産を強化するしか方法はない。そのために、北朝鮮政権は無償労働力の新たな供給源を必要としている。
若い「ボランティア」の「知恵と勇気」を称賛することで、彼らを共産党の「お手本」に仕立て上げるという意味もある。若者たちは、自己犠牲を偶像化した存在となっていく。
金氏はK-POPや海外のニュース、ドラマといった外部メディアは「危険な毒物」だとし、国内の若者の反対意見を取り締まろうとしている。
国内の状況が厳しくなれば、外国の暮らしがどういうものか、ほかの人たちはどういう楽な暮らしをしているのか、金書記長としては国民に知られたくないだろう。若者を炭鉱へ送り込んでいる今なら、なおのことだ。
北朝鮮の孤児数百人、鉱山や農場での肉体労働を「志願」=国営メディア - BBCニュース
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