西崎啓太朗
「午後5時に荷物を届けるから必ず家にいてほしい」。不審な電話を受けた高齢の女性を守ったのは、地域の民生委員だった。
水戸市常磐地区の民生委員を務める岩瀬登さん(74)の元に、1人で家にいた女性から相談が寄せられたのは4月11日午後3時半ごろだった。宅配業者を名乗る男から電話があったという。女性は「必ず」という言葉が引っかかった。
岩瀬さんも「怪しい」と直感した。110番通報を促し、女性宅へ向かった。駆けつけた警察官とともに「知らない人が来たら、決して玄関扉を開けないで」と伝え、近所の見回りを始めた。
すると午後4時半過ぎ、見知らぬ若い男3人を見つけた。その後、うち2人は女性宅へ、1人は見張りのためか離れた場所に移動した。岩瀬さんは110番通報し、女性宅に裏口から入り、玄関で男らに応じることにした。
「どのような用件で来たのか」と聞くと、男らは「電気の点検に来た」と答えた。だが事業所名も言わず、点検に必要なチェック表も持っていない。いったんは引き揚げた警察官が来るまで時間稼ぎをしなければ。「どこから来たのか」「名前は」「生まれた年は」。必死で話をつなげた。
数分後に警察官が到着。男らは逃げ出した。岩瀬さんは1人を押さえ込み、住居侵入容疑での逮捕につなげた。水戸署の谷津成久署長は「警察官が着くまでの数分は長く感じたと思う。恐怖の中、冷静に時間を稼いでくれた」と感謝した。署によると、その後の捜査で逃げた2人も同容疑などで逮捕した。
首都圏では、ガス設備の点検などを装って住宅に押し入り、金品を奪う強盗の被害が起きている。水戸署は男らが窃盗や強盗の目的で女性宅を訪れたとみて調べている。「身に覚えのない電話があったら、警察や身近な信頼できる人に相談してほしい」と長塚憲章副署長は話す。
岩瀬さんは、亡くなった妻の後を継ぎ、5年ほど民生委員を務める。詐欺被害への注意喚起を促すビラを配ったり、日頃から近所の家を回ったりし、「不審なことがあったら相談して」と声をかけてきた。谷津署長から感謝状を受け取った岩瀬さんは「これからも地域のつながりを大切に活動を続けたい」と話した。(西崎啓太朗)
「怪しい」民生委員の直感 警官来るまで数分の駆け引き - 朝日新聞デジタル
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