新型コロナウイルスのデルタ株が感染者の9割以上を占めるようになり、子どもの感染も増えている。デルタ株の感染力の高さに加え、大人の行動が子どもを危険にさらす側面もある。夏休みが終わり、教育の意義と感染対策どちらを優先するべきか、現場は難しい判断を迫られる。厚生労働省と文部科学省の方針にも矛盾が生じている。(沢田千秋)
◆特に感染しやすいわけではないが…
「デルタ株の流行以降、10代以下の感染者数は増加傾向にある」。国立感染症研究所の脇田隆字所長は25日、専門家組織の会合後そう話した。東京都の感染者に占める10代以下の割合は29日は18.7%。半年前は1割前後だった。
感染研によると、4月ごろから、全国で、感染者に占める18歳以下の割合が増え始めた。だが、64歳以下の感染者に占める割合でみると、増加は緩やか。24歳以下では割合に変化はなかった。「ワクチン接種で高齢者、中年世代の感染が半年前と比べ相対的に減少傾向にあることが、18歳以下の割合増加の一因」(感染研)と考えられ、特に子どもが感染しやすいわけではない。
ただ、最近の感染状況をみると、デルタ株は大人だけでなく、子どもにも容赦がないとは言えそうだ。デルタ株登場までは、子どもはウイルスと結合する細胞表面の受容体タンパク質(ACE2受容体)の発現度が低いため、感染しにくいとの説もあった。
◆厚労省と文科相で方針に矛盾
実際、子どもの居場所でのクラスター(感染者集団)は増えている。幼稚園、小中学校、高校、大学や学習塾、部活動、寮などの学校・教育施設等では、8月は約240件発生。夏休み中にもかかわらず、7月の2倍近い。保育園や学童クラブなどの児童福祉施設も8月は200件以上で7月の5倍だ。
事態を受け、感染研実地疫学研究センターは教育機関等へ向けた提案書を作成。教職員や生徒らのワクチン接種や大学でのリモート授業などを積極的に推奨し「人の密集が過度になるリスクが高いイベント(文化祭、学園祭、体育祭等)」は延期や中止の検討を求めた。
一方、文科省が全国の教育委員会などに出した20日の事務連絡には、運動会や修学旅行は「有意義な教育活動」とし、感染対策や保護者の理解を前提に「実施に向けて検討を行う」とある。感染研の提案と矛盾し、現場の混乱を招きかねないが、厚労省担当者は「こちらは感染対策の観点でまとめた。厚労省から文科省に情報提供し、実際の適用は現場で判断していただく」とにべもない。
◆繁華街に繰り出す中高年に「わがこととして」
自宅での感染対策も不可欠だ。厚労省の調査では、15歳以下の感染場所の最多は自宅だった。脇田氏は「大人の感染が増え、家庭内感染が増えている。大人の行動が子どもたちの感染に間違いなくリンクしている」と大人からもたらされる感染リスクを指摘する。
繁華街に繰り出す人のうち40~64歳の割合が最も高い。「働き盛りで行動が活発な人は家族がいる人も多い。今どういう状況にあるか、わがこととして共有してもらうことが一番重要だ」と自制を呼び掛けた。
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