新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が明け、人の流れや街の活気が戻りつつある。ただ、感染者急減の理由は明確に分かっていない。専門家は5つの仮説を挙げるが、決め手に欠ける。リバウンド(感染再拡大)を防ぐには、感染過程とウイルスの特性の解明が不可欠だ。(沢田千秋)
「第6波に備えるには、なぜ感染が急拡大し、急激に落ちたかの分析が非常に重要だ」。新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は9月28日の記者会見でそう述べ、仮説として急減理由に5つの要因を挙げた。
①危機感 各自が感染対策?
第5波の1日の感染者数のピークは全国で2万5800人超。東京都は8月13日に5700人超を記録した。医療が逼迫(ひっぱく)し、治療が受けられず自宅で亡くなる例が次々と報道された。「深刻な医療逼迫がマスコミを通して一般に発信され、人々が危機感を高め、感染対策に協力してくれた」(尾身氏)
②夜の街 若い世代が避けた?
感染爆発を受け、政府は夜の繁華街の人出の5割削減を要望したが、2、3割の減少にとどまった。それでも大きな効果があった可能性がある。夜の街の人出の年齢構成から、ワクチンを打っていない若い世代が、意識して夜遊びを避けたとの見方だ。
③ワクチン 接種率向上の効果?
①、②の説では説明ができない数字もある。1人が何人にうつすかを示す全国の実効再生産数が1.4とピークを迎えたのは7月下旬。新規感染者数のピークの1カ月近く前で、ワクチン接種回数が7000万回を超えた時期と重なる。接種率向上が実効再生産数を下げた可能性がある。ただ、尾身氏は「自然感染した人も一定程度いるので、抗体保有率の厳密な調査が待たれる」と見通す。
④クラスター 高齢者守られた?
これまでの感染は、まず若者に広がり高齢世代に移った。1月の第3波ではクラスター(感染者集団)に占める高齢者施設の割合は4割近かったが、今回は10%前後。医療機関のクラスターも2月の最大値30%が5%ほどだった。ワクチン接種に加え、院内の感染防止策が徹底されて高齢者が守られ、若い世代の感染にとどまったとの指摘もある。
⑤気候 換気や降雨が影響?
「なかなかこれは証明は難しい」としつつ、尾身氏は気温や降雨に言及。気温が下がり、空調を効かせた部屋の窓を開放し換気がよくなったことや、雨が多く外出機会が少なかったことが関係したかもしれない。
5つは急減要因として考え得るが決定打とまでは言えない。
厚生労働省の担当者は「急減理由が分からないと言うと不安をあおる。定量的にどの要因の割合が高いかは分からないが、人々の行動変容とワクチンの2つが合わさり減少した。外国に比べ、日本人の感染予防への意識の高さが大きく寄与している」と分析する。
政府分科会のメンバー
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なぜ感染者数は急減したのか? 再拡大防止に不可欠だが…専門家が挙げる5つの仮説でも解明しきれず:東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞
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