百貨店の壁に化石が埋まっている。
意図的に施した装飾と見まがうばかりの、しかしまったく自然の成りゆきで紛れこんでしまっただけのアンモナイト。磨きあげられた石壁の中に突如現れる渦巻きは、何だか間が抜けていてかわいい。
いつか何かのテレビ番組で見たそれが、日常の延長線上に、それも無数に浮かび上がってきた日があった。
ひょんなことから、日本橋三越本店でアンモナイト探しをすることに
10月某日、神田川でのツアークルーズに参加するため友人と日本橋を訪れた。しかし未明からの雨によりツアーは欠航。手持ち無沙汰になった我々は、中央通りからふと日本橋三越本店を臨んだ。
老舗名店百貨店が堂々と建ち並ぶ日本橋~銀座エリアにおいても、日本橋三越本店はひときわ目を引く建築である。
本館1階フロアの内装デザイン「白く輝く森」がすごい。中央ホールにそびえる遠近感の狂いそうな天女像がすごい。どこへ視線を向けても装飾の作り込みがすごい。現代では百貨店へのお出かけがハレのイベントであるという意識は薄れていると思っていたが、ここは明らかに買い物のためだけに作られた空間ではない。「日本橋三越本店へ行く」ことの価値が体現されているのだ。
スイッチが入った我々は、屋上から地下まで一通り眺めつくそうと試みた。
そして、中央ホール吹き抜けの中心に鎮座する大階段を楽しんでいた時のことだった。
「よろしければ壁面に化石があるので探してみてください」
スタッフの方に手渡された『化石探検MAP』。吹き抜けの階段から地下にかけて番号が振られた場所にアンモナイトや、イカの近縁生物・ベレムナイトなどの化石が埋まっているという。古い石材を使用した壁に化石が埋まっていることがあるという話を聞いたことがあるが、この日本橋三越本店の壁にも埋まっていたとは。無軌道な百貨店探索に指針が出現した。
館内に1万数千個、1日に数個「新モナイト」も…日本橋三越本店で“本気のアンモナイト探し”をやってみた - 文春オンライン
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