令和2年(2020年)度、警察庁発表の交通事故死者数は2839人。令和元年(2019年)より376人少なく、統計開始以来4年連続最小を更新し、今回初めて3000人を下回った。喜ばしいことに交通事故死者数は年々減少している。しかし、ここでいう「交通事故死者数」という言葉が、“交通事故によって死亡した人数ではない”ということをご存じだろうか? 交通事故死亡者数の不思議について見てみたい。
文:江藤誌惠/写真:ベストカー編集部/図版引用元:警察庁
【画像ギャラリー】交通事故の恐怖! 即死か30日以内に死ぬか!(5枚)交通事故死者にカウントされるのは24時間以内に死亡した人だけ
実は、日本では事故発生から24時間以内に死亡した人のみを「交通事故死者数」としている。これを「24時間死者」という。なので、事故発生から25時間後に死亡した人は、交通事故死者数には入らないのだ。警察庁は、昭和23年(1948年)以降の統計からずっと「24時間死者」をカウントしており、警察署や交番前に置かれた看板『昨日の交通事故~死亡/負傷』に記載されている数字がこれに当たる。
だから、前述した2020年度の交通事故死者数2839人は「24時間死者数」を現わしているというわけだ。「それっておかしくない?」と思う人は多いだろう。もしも、大切な人が交通事故に遭い、事故発生から25時間後に死亡したから「交通事故死者数」にカウントされないとなると、ちょっとやり切れないのではないだろうか。
事故後30日以内に死亡した数でいえば、まだ3000人越えという現実!
「24時間死者」に対し、24時間を越え、30日以内に死亡した人を「30日死者」という。令和2年(2020年)の「24時間死者」2839人に対し、「30日死者」は577人。「24時間死者数」同様、年々減少し続けている。しかし、交通事故の実態を見るなら、「24時間死者」と「30日死者」を足した「30日以内死者」で見るべきではなかろうか。
「24時間死者」2839人と「30日死者」577人を足した「30日以内死者」は3416人。警察庁が「交通事故死者数3000人を切りました!」と高らかに宣言しても、「30日以内死者数」で見れば3000人を切ってはおらず、「24時間死者数」を2割押し上げる結果となるのだ。
世界では「30日以内死者」をカウントするのがスタンダード。日本も世界基準に合わせ、国際比較ができるように平成5年(1993年)から「30日死者」の統計を取り始めたおかげで、実態に即した交通事故死者数を把握できるようになったのだ。とはいえ、国内で発表される交通事故死者数は「24時間死者」なので、「30日以内死者」を見ない限り、やはり即死~24時間以内の死亡者のみの数字がメインとなる。
ちなみに、世界で最も交通事故死亡者(人口10万人あたり)が多いのはコロンビア(2017年調べ/13.63人)、2位アメリカ合衆国(2018年調べ/11.17人)、3位チリ(2019年調べ/10.24人)。日本は27位(2019年調べ/3.10人)と健闘している。
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交通死亡事故は減ってない!? 統計による死亡者数のマジック - ベストカーWeb
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