新しい時代の短歌を切り開いてきた歌人と、短歌をつくるAI(人工知能)が出会ったら、何が起こるのか――。ベストセラー歌集「サラダ記念日」などで知られる俵万智さんに、無数の短歌を瞬時に生成してしまう「短歌AI」の世界を体験してもらった。AIが瞬く間に生み出した短歌を読んだ俵さんは驚き、そして……。
「サラダ記念日」で知られる歌人の俵万智さんや、朝日歌壇選者の永田和宏さんに、短歌を生成するAI(人工知能)の世界を体験してもらいました。俳句や小説の話題も交え、創作とAIの関係について考えます。
2年前の春から朝日新聞の短歌投稿欄「朝日歌壇」の編集を担当している私の耳に、短歌を生成できる「短歌AI」を社内の研究員が開発したという話が飛び込んできたのは、昨年末のことだった。
大量の言語データを使って五・七・五・七・七という短歌のリズムや言葉の並び方を学習させたAIで、任意の言葉を入力すると、その言葉に続けて即座に短歌を詠むという。
将棋や囲碁のAIが、プロの棋士たちと互角に戦う現代。でも私は、短歌の世界にAIは縁遠いと思っていた。
取材で多くの歌人に会い、一首の短歌を詠むために時には半年ぐらい推敲(すいこう)を重ねることもあると知った。歌人が悩みに悩んで作品を絞り出す行為をAIに期待するのは、邪道なのではないか。
ところが、俵万智さんにその話をしてみたら「どんな歌をつくるのか、見てみたい」と思いがけず前向きな返事が。この春大学生になった息子の匠見(たくみ)さんがこの分野に関心を持っていて、AIと短歌の関係について話したこともあるという。
「短歌AI」を開発したという社内の「メディア研究開発センター」(M研)にその話を伝えると、それなら俵さんに短歌AIを体験してもらおう、という話がもちあがった。俵さん親子は、AIがつくる歌をどう評するのか――。
AIの短歌に「やられたな」
3月の昼下がり、東京・築地の朝日新聞東京本社。俵さんと匠見さんを、「短歌AI」を搭載したパソコンの前に案内した。
五・七・五の「上の句」を入力すると七・七の「下の句」を加えた短歌が生成される、とM研の担当者が説明する。現在のモデルでは1.1秒で100首の生成が可能だという。
俵さんが「手帳持ってきていい?」と席を立った。ちょうど推敲(すいこう)している途中の歌を入れてみたい、という。戻ってきた俵さんが上の句を読み上げた。
「実感のないこと歌になりづらし」
担当者がそれをパソコンに入力する。「(出てくる歌が)すんごいよかったらやだねえ」と画面を見つめる俵さん。
……
《実感の>ないこと歌に>なりづらし>われに歌ありと>うしろ姿に》
《実感の>ないこと歌に>なりづらし>喝采を>受けずにはいられない》
……
瞬く間に、AIが生成した歌が画面いっぱいに表示された。「おお、なになに」と俵さんが身を乗り出した。「すごいねえ。そばにあったら、ちょっといい気分転換になりそう」
自身も歌を詠み、全国高校生短歌オンライン甲子園で準優勝している匠見さんも「いろんな落とし方があっておもしろい」と画面の歌に見入っている。
さらにM研が披露したのは、俵さんがこれまでに出した6冊の歌集を短歌AIに学習させた「万智さんAI」だった。
累計285万部の第1歌集「サラダ記念日」から最新歌集「未来のサイズ」まで、2千首を超す作品を覚え込ませたという。
記事後半では、俵万智さんとともに「AIと創作のこれから」「人はなぜ歌を詠むのか」について考えます。短歌AIに触れて俵さんが詠んだ一首についても紹介しています。また、「万智さんAI」を体験する俵万智さんの動画も掲載しています。
再び俵さんが上の句を読み上げ、担当者が「万智さんAI」に入力する。
「二週間前に赤本注文す」…
俵万智さんが短歌AIを体験してみたら 驚きの下の句に「やられた」 - 朝日新聞デジタル
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