羽「あいつさ 素足で革靴履くんだよ」
石「えっ?」
羽「絶対足臭いよね♪」
石「何の話ですか それ」
羽「シンプルな悪口だよっ!」
金曜ドラマ『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』(TBS系、毎週金曜よる10時)で、弁護士・羽男を演じる中村倫也が、その魅力をいかんなく発揮している。「中村倫也史上いちばん好み」「好き度がかなり上がった」「ハマり役」という声も上がる。
相棒であるパラリーガル・石子を演じる有村架純との掛け合いも心地よく、回を追うごとにその演技はより自由に、より豊かに馴染んでいく印象。コミカルなやりとりは絶妙の間で交わされ、同じへの字口になってみたり、「ノマドワーカー」変換で泳がされてみたり、口角の上がり具合を相談してみたり…道草を楽しむような時間が愛おしく思える。そんなユルい空気感の会話とは対照的に、感情が凝縮し、スイッチが切り替わるような研ぎ澄まされた瞬間にぐっと心を持っていかれる。対峙する相手や状況によって、“見え方”が違うのも魅力だろう。
記事冒頭は、先週の第8話で羽男が宿敵・丹澤弁護士(宮野真守)のニヤリ顔を思い出して、愚痴る場面。「バカ!チェッ!」と言いながらゴムボールをソファーに何個も投げつけ、絵にかいたように悔しがる羽男。表情と声色と眉の向きをコロコロ変えながら独特の切り口で悪口を言うが、気持ちは戻らない。そして想定外のことが起こると手が震えるという、おさまっていた症状が出たことを嘆く。
「何 弱気なこと言ってんだ そこの弁護士!」
第4話の朝焼けの階段シーンと全く同じセリフで羽男の背中をしばく石子。羽男が自分の弱い部分と向き合った朝を思い出させるように。羽男がコンプレックスに向き合う時、石子の方がずいぶんと大人に見える。
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しかし、石子がコンプレックスに向き合う時は、羽男の方がずいぶん大人に見える。その接し方は気遣いにあふれ、心地よい距離感。大きなアクションで楽しませるコミカルなシーンとは打って変わって、その芝居も繊細だ。
石子の父・綿郎(さだまさし)は採算度外視で依頼を受け、母はその分、外で働いて父を支えたが、やがて限界がきて離婚することに。石子には父が母を苦しめたという気持ちが拭えないでいた。
第8話の案件をきっかけに、その気持ちが噴出。綿郎に強くあたった石子が一人階段で座っていると、羽男が声をかける。「かける?青のり」。焼きそばとお茶を持ってきている。「それ言いに来たんですか?」と石子に尋ねられても核心には触れない。「おなかへってるかなーと思って ああ 青のりじゃなくて かつおぶし派だったか」。石子が自然に話すまで、決して羽男からは何も聞かない。石子が複雑な思いを話し出すと、「どんな人だったの?お母さんって」「そりゃまあ スイッチ入っちゃうわな」と自然と石子に寄り添う。
温かさはあっても親身になりすぎない、相手が好きなところで会話を終わらせられるようなトーン。どうして父親に対して敬語になるのか「自分でもわかりません」と自嘲気味に話す石子を表情と首の動きで受け止めて「所長(=綿郎) タメ口に戻りたがってたよ」とは伝えても、次に「どーする?」と尋ねたのは青のりのこと。踏み込みすぎない。決断を促したりはしない。結局ドバドバ青のりをかけ「はい召し上がれ」。「すーごいかけたな」いつもの石子に戻っていた。
「仕事の話 していい?」と石子を気遣って尋ねるまでと、そこから仕事の話を始める声のトーンがまた違う。同じ階段のシーンだが、話し方でちょっとした場面の切り替えを感じさせる繊細な芝居にも驚かされた。
『石子と羽男』中村倫也の振り幅に酔う、心地よい距離感とエグい対比 - ドワンゴジェイピーnews
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