タイトル戦で圧倒的な強さを見せ、2022年の将棋界をけん引した藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖。その「絶対王者」に3勝1敗と勝ち越し、「藤井キラー」として知られるのが、深浦康市九段(50)だ。同じ世代の羽生善治九段(52)とも数多く対戦してきた深浦九段に、1月8日開幕の第72期ALSOK杯王将戦七番勝負の見どころや、どうしたら藤井王将に勝てるかを聞いた。【聞き手・武内亮】
王将戦の開幕を前に藤井王将や羽生九段、両者にゆかりのある棋士に意気込みや展望を聞きました。
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挑戦者として挑む羽生善治九段「長年の経験値を反映できるか」
七番勝負を森内俊之九段が展望 「羽生九段は最新型研究している」
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本来の羽生九段の調子に戻っている
――王将戦七番勝負は防衛を目指す藤井王将に、タイトル通算100期を目指す将棋界のレジェンド、羽生九段が挑戦者するという、大注目のシリーズとなりました。羽生九段は王将リーグを6戦全勝で突破しましたが、戦いぶりをどう見ましたか。
◆自分も王将リーグでの戦いの経験がありますが、トップ棋士と勢いのある若手が集う最強リーグなので、全勝ということは自分は考えたことが一瞬たりともありません。全勝する棋士は王将リーグでも限られていますが、羽生九段は9年ぶりに全勝を飾りました。これはちょっとすごい快挙だなと思います。
前半戦は、服部慎一郎五段、糸谷哲郎八段、近藤誠也七段と若手主体の対戦でしたが、普段通り気負った様子もなく自然体で戦い、勝っていたのが非常に印象的でした。その戦いに限らず、今回の王将リーグは非常に自然な形で良くなっているケースが多かったので、本来の羽生九段の調子に戻っているのかなと思いました。
――羽生九段の持ち味が発揮されたシリーズだったと。
◆そうですね。終盤力もそうですが、中盤の引き出しの多さが特徴だったと思います。糸谷八段との対局は終盤、苦しい時間も多かったので、その競り合いの中で勝てたのは大きかったかなと。
――6局の中で特に印象に残っている対局は。
◆永瀬拓矢王座との将棋ですね。角換わりの定跡化された将棋で、互角の形勢から終盤戦に入ったんですが、先手の永瀬王座が趣向を凝らしやすいというか、ペースを握りやすい将棋でした。後手の羽生九段が勝つのは難しいかなと思ったのですが、歩の連打で守ってギリギリ残して勝ったのは、羽生九段らしいなと思いました。
――羽生九段は現在52歳ですが、今も第一線で活躍しています。活躍し続けられる理由は何でしょうか。
◆羽生九段は棋士になった時の気持ちを忘れないで、好奇心を絶やさずにやってきたのが、今の活躍につながっているのかなと。
――深浦さんも羽生九段と同じ世代で、羽生世代の一人と言われます。羽生九段の活躍は励みや刺激になりますか。
◆羽生九段がタイトルを持っていた時は、羽生九段を目標にそのタイトルに挑戦したいなと常に思っていましたし、羽生九段を目標としていた棋士も多いと思います。常に目標である人でもありますし、羽生九段と対局することが本当に楽しくて、感想戦も含めて第一人者と戦っているという気持ちになるので、毎回挑戦を目標にしていました。
――羽生九段とはタイトル戦の七番勝負で4回対戦しています。成績は2勝2敗の五分ですが、羽生九段とタイトル戦を戦う時はどのような気持ちでしたか。
◆思い切ってぶつかることはそうなんですが、まず考えなくてはいけないのは、やはり戦型の選択でした。羽生九段は今の棋士全体から見ても(戦型が)一番幅広く、それを一つ一つ研究していくのですが、かなりの労力でした。対戦相手としては非常に厄介ですよね。矢倉とか角換わりのような本格居飛車もありますし、横歩取りのような変化球もあります。それに振り飛車も加わったりするなど全てのスキルが高い棋士です。自分が挑戦者に決まった時は、その対応に一番時間を使いましたね。
羽生九段からタイトルを奪いたい
――深浦さんにとって羽生九段の存在はどのようなものですか。
◆自分が負けず嫌いっていうこともありますが、その時の第一人者であってもやっぱり対等に戦いたい、この人からタイトルを奪いたいという、そんな存在でした。羽生九段に勝てば、自分としても自信を持てますし、周りの方も「深浦頑張ってるな」っていう感じで見てくれますので、非常に燃える相手です。
――以前、深浦先生は「番勝負は恋愛に似ている」と言われたことがありますね。
◆羽生九段とタイトル戦を戦った当時はSNS(ネット交流サービス)などな…
“藤井キラー”深浦康市九段が考える「王将に勝つ方法」 - 毎日新聞
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