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Thursday, March 23, 2023

『シン・仮面ライダー』公開劇場情勢&興行分析|今後の粘り強い興行がカギに? - CINEMAS+

1971年に放映開始となった特撮ドラマシリーズ「仮面ライダー」。

1号(本郷猛)と2号(一文字隼人)が悪の秘密結社ショッカーが放つ怪人と戦うヒーロー譚。その生誕50周年記念企画の大本命として、庵野秀明監督が手掛けた『シン・仮面ライダー』がついに公開されました。

望まぬ改造を受けた仮面ライダーの孤独な闘いを現代的にアップデートしつつ、原典の魅力を再構築した意欲作です。

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※本記事は一部、映画『シン・仮面ライダー』の内容に触れています。大きなネタバレはありませんが、予備知識ゼロで映画を楽しみたい方は鑑賞後にご覧ください。

企画発表は50年目の夜、完成は公開10日前

そもそもの『シン・仮面ライダー』の企画は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』を東映の子会社ティ・ジョイが配給したことから始まったようで『シン・ゴジラ』公開された2016年の1月には庵野秀明監督からアイデアが出されたとのこと。

その後、一般メディア向けにはテレビドラマ「仮面ライダー」の第1話が放映されてからちょうど50年となる202年の4月3日の19時30分に東映のメイン劇場丸の内TOEIにて「仮面ライダー生誕50周年企画発表会見」が行われました。

そこで3本の大きな企画が発表。1つはドラマ「仮面ライダーW」の後日談「風都探偵」のアニメシリーズの放映、そして「仮面ライダーBLACK」を『狐狼の血』の白石和彌監督がリブートする「仮面ライダー BLACKSUN」の配信、最後の企画が庵野秀明監督による『シン・ゴジラ』以来の実写監督作品となる長編映画『シン・仮面ライダー』の製作と公開でした。

かつて自主製作映画でウルトラマンを演じたこともあった庵野監督が、“ウルトラマン”を別の人間に任せてまで“仮面ライダー”を採ったということに驚く人もいましたが、過去に仮面ライダーのコスプレをした庵野監督の姿を知るうちに庵野監督の“仮面ライダー愛”を強く感じていくことになります。

そして仮面ライダー展や庵野秀明展で情報が少しずつ解禁に。

特に庵野秀明展では『シン・仮面ライダー対庵野秀明展』と題した合同記者会見が行われ仮面ライダーや愛車のバイク“サイクロン号”などがお披露目され、さらに主人公の本郷猛を池松壮亮が、ヒロインの緑川ルリ子を浜辺美波が演じることが発表され、庵野監督との3ショットが実現しました。

以降、仮面ライダー2号(一文字隼人)の登場と柄本佑のキャスティング、敵対する組織がオリジナル同様SHOCKER(ショッカー)になることなど、作品情報が随時更新されていきます。

他方で近年の“庵野監督作品”らしく、話の本筋に関わる部分やキャスティングの一部などは、予告編を筆頭に各種宣伝ツールでも徹底してトップシークレット扱いとなりました。

宣伝のストロングポイントを公開中に据えて

結果論的な見方の話ではありますが、完成報告と“初号試写”が行われたのは2023年の3月7日、劇場公開のわずか10日前ということでした。つまり、それまでは宣伝しようにも完成形がなく、全容を語りたくても語れなかったということが分かりました。

当然、マスコミ向けはもちろん一般向けの試写も全くなく(初号とプレミアの1回)、ほぼすべての人がフラットな環境で映画館に足を向けるということになりました。

この徹底したシークレットな宣伝手法については、賛否やリスクもあります。「庵野秀明作品」「仮面ライダーの新作」という強い“引き”があってこそ成立する手法で、どの映画でも通用するモノではありません。

とはいえ、同じ東映配給の『ONE PIECE FILM RED』と『THE FIRST SLAM DUNK』も同様の手法で興行収入100億円を突破する大ヒットを記録しているため、シークレット宣伝を採るケースも増えてくるのではないかと思います。

『シン・仮面ライダー』の白倉エグゼクティブプロデューサーは興行期間中(公開期間中)に最大の宣伝ポイントを置くことの利点として「面白そうと思ったらすぐに行ける、即効性がある」と語っています。
 
『ONE PIECE FILM RED』と『THE FIRST SLAM DUNK』の成功を見たスタジオジブリの鈴木プロデューサーは、宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』で同様の手法を採るかもしれないと語っています。

待望の公開~初日劇場レポ&初週興行収入動向!

筆者は3月17日の最速公開回(夜18時の回)を、近年の大ヒット映画のヒットの震源地と言っていいTOHOシネマズ新宿で見て参りました。舞台挨拶中継付き上映ということもあって流石の満席、ソールドアウトでした。

といっても、『シン・仮面ライダー』は配給が東映ということもあって、同グループの新宿バルトの方が上映回数は多いため様子を覗いて来ました。『ONE PIECE FILM RED』と『THE FIRST SLAM DUNK』の時と同じケースです。

インターネットチケット販売が定着したため、作品がどれだけ混雑してもチケットブースで長蛇の列ができるという例は減りましたが、その一方で劇場グッズショップに関しては、一部ネット販売も拡充中とはいえ、やはり混雑します。

新宿バルト9もTOHOシネマズ新宿もグッズショップはかなりの混雑でした。

ただ、ここで注意点として『シン・仮面ライダー』と同日公開で、昨年ドラマ出演でさらに人気を増したSnowMan目黒蓮初単独主演作品『わたしの幸せな結婚』があります。実際mpグッズショップでは『シン・仮面ライダー』と並んで『わたしの幸せな結婚』についても、関連グッズの購入制限を呼びかけるアナウンスがありました。

そして最初の週末が終わり、ランキングが発表されました。

結果は観客動員、興行収入ランキングではなんと、『わたしの幸せな結婚』が『シン・仮面ライダー』を抑えて堂々の1位!金曜日18時まで上映がなかった『シン・仮面ライダー』と金曜日朝から上映していた『わたしの幸せな結婚』との差が出てしまった感があります。

18日以降、メインキャストによるゲストビジットを展開するなど動員に力を入れた『シン・仮面ライダー』は、一歩及ばずという形になりました。

2022年5月13日(金)朝から公開した『シン・ウルトラマン』との対比では、観客動員が53.9%・興行収入で54.5%というスタートに。『シン・ウルトラマン』は『シン・ゴジラ』を上回るロケットスタートだったため、差がはっきり出た印象があります。

ただ『シン・ウルトラマン』は『シン・ゴジラ』の半分ほど数字で終わったことと、映画のブランド力(=動員力)という点では“ウルトラマン映画”が興行収入10億円未満で終わっている一方で、“仮面ライダー映画”は10億円を越えることも多いという実績もあります。

4月14日の名探偵コナンの新作映画の公開までは、しばらく興行地図は穏やかに推移すると思われるため、『シン・仮面ライダー』の粘りのある興行に期待したいです。

今後の動きや続編の可能性は

続編の可能性について、『シン・ゴジラ』はハリウッド版ゴジラシリーズとの兼ね合いや、2023年11月公開予定の山崎貴監督による新作ゴジラ映画も控えているため、可能性は低いでしょう。

一方で『シン・ウルトラマン』と『シン・仮面ライダー』には、庵野秀明監督自身が続編の構想に触れるなど余地を残しています。

『シン・ウルトラマン』の興行収入44.4億円、そして『シン・仮面ライダー』の公開初動の対『シン・ウルトラマン』比54%という数字を創り手がどう判断するか、庵野秀明監督がどう動くのかに注目です。

ちなみに庵野秀明監督の今後の作品は、現状公になっている範囲では待機作はない状態です。

(文:村松健太郎)

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