「HIGHCOMMUNICATIONS TOUR」は2003年から不定期で実施されている、「あえてコンセプトを決めない自由度の高いライブパフォーマンスを行なう」ことをテーマとしたツアー。6年ぶりの開催となった今回は「The Ghost of GLAY」というタイトルが示すように、これまで幽霊のように隠れていたGLAYの楽曲をフィーチャーしたレア度の高い内容に。TERU(Vo)は今年2月のインタビューで「1曲目からマニアックな感じで、代表曲は1曲くらいかな?」「ファンの皆さんは覚悟して会場に来てください」と意味深に語り、ファンの期待を高めていた。
開演と同時にステージを覆っていた紗幕には、最新シングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」のジャケットで描かれていた「輪廻転生」をテーマに六道輪廻図をベースとしたコラージュアートが大きく映し出される。荘厳なオープニング映像に続き、フードを被った4つのシルエットがぼんやりと浮かび上がると同時に、観客の耳に飛び込んできたのはJIRO(B)が奏でるグルーヴィなビート。抑制を効かせながらも確かな存在感を放つ音を口火に、TAKURO(G)とHISASHI(G)のギター、TERUのささやくようなボーカルが加わり、ライブは「THE GHOST」で妖しく幕を開けた。
サイバースペースを想起させる映像が曲の世界を引き立てた「THE FRUSTRATED」を経て、TOSHI(Dr)の叩くシンバルをきっかけに紗幕が上がり、ラフな衣装に身を包んだメンバーとステージの全貌が明らかになる。「待ってました!」とばかりに大歓声を上げるファンに向けて、メンバーが届けたのは1996年リリースの大ヒットアルバム「BELOVED」から「Lovers change fighters, cool」。さらにTERUの「ただいま! 暴れていこうぜ」というシャウトに続き「嫉妬」が投下され、激しく勢いのあるロックナンバーが会場の熱をどんどん引き上げていく。四つ打ちのリズムと歌謡曲的なアプローチが光る「華よ嵐よ」を挟んで披露された「FAME IS DEAD」では、TERUが「お前が欲しい!」とオーディエンスに向けて叫び、観客の声をひたすらに求める。曲のクライマックスでは「GLAYが欲しい」のコール&レスポンスが繰り広げられ、TAKUROとJIROはその光景を前に笑顔を浮かべながら拳を突き合わせ、客席を大いに沸かせた。
ライブの中盤を彩ったのは、狂おしい感情を切々と歌い上げた「恋」「氷の翼」、反戦の思いが込められた「CHILDREN IN THE WAR」といったシリアスなトーンの楽曲。「CHILDREN IN THE WAR」はイラク戦争が勃発した20年前の「HIGHCOMMUNICATIONS TOUR」でも披露されていたが、ウクライナ侵攻をはじめとする戦争が続く2023年の今も切実な思いをもって響いていた。ヒリヒリとした空気は「I will~」で柔らかくほどけ、続く「pure soul」で温かなものへと緩やかに変化。「pure soul」ではTERUがマイクを強く握り締め、TAKURO、HISASHI、JIRO、TOSHI、村山☆潤(Key)が紡ぐ豊かなアンサンブルを浴びながら、「今いる自分を支えてくれた人 この歌が聴こえてるだろうか?」と客席にまっすぐに歌声を届ける。そして深い余韻が残る中、「いつも支えてくれて本当にありがとう」とファンに向けて感謝の思いを真摯に伝えた。
後半戦の狼煙を上げた最新曲「限界突破」を皮切りに、ギミック満載のHISASHI節がさく裂する「JUSTICE [FROM] GUILTY」「黒く塗れ!」、JIRO得意のシンプルなロックサウンドが味わえる「DOPE」を続けて披露し、攻撃的なモードにシフトしたGLAY。ひさびさとなるロングツアーで培った脂の乗りまくったパフォーマンスで会場を圧倒する一方で、TERUは「3カ月半の旅の中で(GLAYが)ワイワイ騒ぎながらやってるのを見て、ホントにいいバンドだなと。僕らは音楽と真摯に向き合っていきます」としみじみと語る。
「これからも一緒に夢見ていこう」。そんな彼の言葉を機に、金銀のテープが弧を描きながら客席に降り注ぎ、「BEAUTIFUL DREAMER」が高らかに奏でられた。TERUが「声を出せなかった3年間を超えて、皆さんの声を聴いて、笑顔を見て、GLAYをやってて本当によかったと思いました」「これからもずっとこの指に触れていてください」と人差し指を客席に伸ばしながら歌い出したのは「Satellite of love」。メンバーはファン1人ひとりに思いを伝えるように丁寧に音を重ね、TERUは最後に「ずっとずっとその指を離さないで」「どうかお願い」とアカペラで絶唱した。
アンコールが始まるや否や、TERUは「お察しの通りかと思いますが……」と前置きして秋に開幕するアリーナツアーの開催を告知する。そこからMCが始まり、JIROは「ツアー開催時期に声出しができるかわからなくて、みんなと歌える曲をぶち込んでなかった」と反省をしつつ、アリーナツアーではシンガロングできる曲を増やすことを約束。また、「『みんなGLAYをあきらめないでくれ』と伝えていたのはアリーナツアーが決まってたからです。だから、GLAYは約束を守ることを(チケットを取れなかった人に)伝えて!」とホールツアーに足を運ぶことができなかったファンに思いを馳せた。「最後くらい真面目にMCを……」と神妙な顔で口にしたのはHISASHI。しかし、ひと呼吸置いて彼は「しません!」と笑うと、「Netflixを観てました。真面目に不真面目、HISASHIでした!」と彼らしい言葉で挨拶をしてファンを笑わせた。TAKUROは「次の約束があるのはとってもいいですね」と充実感をにじませながら3カ月半におよんだツアーを振り返り、「50過ぎてもバンドってうまくなるんだぞ。だから、みんなあきらめるな!」と観客の背中を押す。また「The Ghost Hunter」と銘打たれたアリーナツアーでは、また新しいGLAYの姿を見せることを誓った。
ツアー中に生まれた新曲「Buddy」と、HISASHIが「声出しが解禁されたら一緒に歌おう」と誓っていた「SOUL LOVE」という2曲のポップチューンを通して会場を晴れやかな空気で包み込んだメンバーたち。「原色の空(Cloudy Sky)」でバンドのルーツであるビートロックをオーディエンスにたっぷり浴びせたあとは、ツアータイトルにも冠されている「HIGHCOMMUNICATIONS」をエネルギッシュにパフォーマンス。楽器隊のダイナミックな演奏に合わせて、TERUと観客がそれぞれの拳を力強く交差させて一体感を生み出す。ステージと客席の垣根が消えたのを見計らうかのようにTERUは「本当に幸せだった。でも、ここがスタートです! いってきまーす」とデビュー30周年を迎える2024年に向けて邁進していくことを宣言し、JIROは客席に向かって投げキッスを飛ばしてオーディエンスを驚喜させた。
しかし、ツアーファイナルらしい充足感が会場に漂う中で、ゆっくりと降りた紗幕には再び「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」のジャケットが投影され、フードを被ったメンバー1人ひとりの姿がぬらりと浮かび上がる。そしてゴシック様式の扉が「バタン!」と音を立てながら閉じ、「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost Hunter-」への伏線を張った。
関連する特集・インタビュー
GLAY「HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY-」2023年6月11日 東京ガーデンシアター セットリスト
01. THE GHOST
02. THE FRUSTRATED
03. Lovers change fighters, cool
04. 嫉妬
05. 華よ嵐よ
06. FAME IS DEAD
07. 恋
08. 氷の翼
09. CHILDREN IN THE WAR
10. I will~
11. pure soul
12. 限界突破
13. JUSTICE [FROM] GUILTY
14. 黒く塗れ!
15. DOPE
16. BEAUTIFUL DREAMER
17. Satellite of love
<アンコール>
18. Buddy
19. SOUL LOVE
20. 原色の空(Cloudy Sky)
21. HIGHCOMMUNICATIONS
WOWOW プライム / WOWOWオンデマンド「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY-」
2023年7月30日(日)19:00~
GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost Hunter-
2023年11月2日(木)宮城県 ゼビオアリーナ仙台
2023年11月3日(金・祝)宮城県 ゼビオアリーナ仙台
2023年11月11日(土)北海道 函館アリーナ
2023年11月12日(日)北海道 函館アリーナ
2023年11月18日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
2023年11月19日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
2023年11月30日(木)東京都 日本武道館
2023年12月2日(土)東京都 日本武道館
2023年12月3日(日)東京都 日本武道館
2023年12月13日(水)大阪府 大阪城ホール
2023年12月14日(木)大阪府 大阪城ホール
2023年12月23日(土)愛知県 ポートメッセなごや
2023年12月24日(日)愛知県 ポートメッセなごや
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「本当に幸せだった」GLAY、3カ月半に及ぶレア曲連発ハイコミツアー完走(ライブレポート) - 音楽ナタリー
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