米バイデン政権は近く、国内で余った新型コロナウイルスのワクチンの他国への譲渡を始める。ワクチン接種が順調に進み、自国民に十分行き渡る見通しが立ったため、「ワクチン外交」に乗り出す形だ。先進国がワクチンを買い占めているとの批判は根強く、3日開幕する主要7カ国(G7)外相会合でもワクチンの公平な分配は重要な議題になる。
米国内で余剰になりそうなのが、まだ緊急使用許可がされていない英製薬大手アストラゼネカ製だ。米国は3億回分を購入する契約を結んでいる。米国内では米ファイザー製などが使用され、既に計2億4千万回の接種が終わった。
米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製のワクチンは1回、その他は2回の接種が必要だ。アストラゼネカはFDAに緊急使用許可の申請をしているが、米食品医薬品局(FDA)はまだ許可を出していない。現在のペースでいけばアストラゼネカ製がなくても十分に足りる見通しだ。
ホワイトハウスは3月中旬、カナダとメキシコにワクチンを提供する方針を発表。4月下旬、アストラゼネカのワクチンを数週間以内に1千万回分、さらに2カ月間で5千万回分を世界に供給できるとの見通しを示した。FDAの審査を経た上で、他国に受け渡す予定という。
バイデン大統領は同月、インドのモディ首相と電話協議で「ワクチンをいつインドに送ることができるかについても議論した」とし、ワクチンを提供する意向を強調した。サキ大統領報道官は「世界中のどこで必要とされているかを判断するプロセスを進めている段階だ」と述べた。
米国では契約に従ってワクチンが供給され、必要分を大きく上回る見通しだ。米デューク大学の研究チームの推計では、7月末までにファイザー製と米モデルナ製が約6億回分供給され、アストラゼネカなどのワクチンも合わせると計9億回分になる見通しという。仮に米国の全人口約3・3億人が2回ずつ接種したとしても、2億回分以上が余る計算になる。
「ワクチン外交」 神経とがらせる中国
具体的な譲渡先は明らかではない。世界保健機関(WHO)などが共同調達して途上国にも公平に分配する枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティー」も対象になりうる。ただ、医師でグローバルヘルスが専門の米デューク大のクリシュナ・ウダヤクマール准教授は「COVAXは非常に重要な仕組みでワクチンそのものを渡すという支援もすべきだが、ブラジルやインドなど人道上の大惨事になっている地域への緊急の対応は十分にできない」と指摘する。COVAXを通じてのワクチン分配には遅れがみられる上、途上国への配分が主な目的で、感染状況に応じて迅速にワクチンを配るという態勢にはなっていないからだ。
そのため、ワクチンの必要性が差し迫っている国に、外交関係の一環として譲渡するという選択肢も出てくる。ウダヤクマール氏は「米国にとって二国間、多国間の受け渡しも必要になる。米国は今年の下半期には世界最大のワクチン輸出国になることができる」と語る。
インドの状況については「現…
米で余るワクチン数億回分、どこへ 対中ロ、透ける思惑 [新型コロナウイルス] - 朝日新聞デジタル
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