
地方議員が政務活動費の支払いにクレジットカードなどを使った場合、付与されるポイントはどう扱うべきか――。キャッシュレス決済が広がる中、クレジットカードや電子マネーを使う議員も少なくない。しかし、税金が原資の政活費で得たポイントの扱いについて、国は各議会の判断に委ねているのが実情で、専門家は「全国統一の基準が必要だ」と指摘している。(猪原章)
数%分
新聞代、電話代、高速道路料金……。大阪府内のベテラン地方議員は、自分名義のクレジットカードで政活費の対象となる諸費用を支払い、総額は年間50万円前後に上る。
ポイントはカード会社によって異なるが、支払額の0・5%~数%分が付与されるものが多い。この議員は、年数千円分のポイントがたまるといい、「法律で禁止されているわけではなく、少しぐらい使ったとしても問題はないだろうが、少し後ろめたい」と本音を漏らす。
政活費の交付は地方自治法で規定され、使途の対象や交付額は各自治体が条例で定める。詳細な運用については、主に議会の規定などで決めている。
議員1人当たりで算出した政活費の月額の交付額(上限)は▽大阪府議会59万円▽横浜市議会55万円▽京都府議会54万円――など、都道府県や政令市で多く、一般市では数万円程度が多い。こうした政活費をカード決済すれば、付与されるポイントは多ければ年数万円分に上るケースもあるとみられる。
しかし、こうしたポイントについて総務省は「透明性を確保しつつ、住民の理解を得られるよう各自治体で判断してほしい」とする。全国市議会議長会が作成した指針でも「住民から許されないと受け止められる可能性もある。取り扱いを決めておくことも一案」としているだけだ。
良識任せ
統一基準がないため、各議会の対応はまちまちだ。
東京都墨田区議会は、クレジットカードの使用を原則禁止している。区議会事務局は「ポイントは使途が不透明になってしまう。税金が原資である以上、許されない」としている。
大阪府議会は1万円以上の使用でポイントが付与された場合、ポイント分を政活費の請求から差し引く仕組みだ。大阪市議会は、政活費の対象となる使途に限ってポイント利用を認めている。しかし、利用履歴の提出は求めておらず、扱いは議員の良識に任されている。
一方、ポイントの私的利用に制限がない議会もある。香川県議会では「特に問題が生じていない」、滋賀県議会も「議論がそこまで至っていない」とポイント利用に制限を設けていない。
ある地方議員は、カード決済で航空会社のマイルがたまるといい「ポイントを目的にカードを使うわけではないが、疑問視されるなら議会が指針を見直し、規制すべきだ」と語る。
住民訴訟
ポイントの私的利用の制限には難しい点もある。
大阪府茨木市議会の政務調査費(現・政務活動費)返還を巡る住民訴訟では、市議らに付与されたポイントが不当な利益に当たるかどうかも争われたが、大阪地裁は2015年の判決で「ポイントの取得で市に損害が生じたとは言えない」との判断を示している。
政府がキャッシュレス決済を後押しする中で、電子マネーやインターネット通販、旅行サイトなど、ポイントが還元されるケースは多岐にわたり、チェックが難しい面もある。大阪府議会では1万円未満の使用でポイントが付与された場合、使途を制限していないが「そこまでチェックすると作業量が多すぎる」(担当者)とする。
総務省は取材に対し、「ポイント利用の実態を把握しておらず、機会があれば調査なども検討する」としている。
政活費に詳しい岩井
◆政務活動費=地方自治法で規定され、自治体が都道府県、市区町村議会の議員や会派に対し、議員報酬とは別に、各議員の調査研究活動に必要な経費として交付する。書籍代や研修への参加費などに使える一方、選挙、政党の活動には充てられない。
政活費50万円をカード払い、ポイント年数万円分も…地方議員「問題ないだろうが少し後ろめたい」 - 読売新聞オンライン
Read More
No comments:
Post a Comment